私はよく夢を見る。
その夢のほとんどに自分や自分の知り合いは出てこない。
全く知らない設定で、まるでドラマや映画のようなストーリー性のある物語が始まって、
それを見ている感覚。
だから私は寝るのが好きで、
まるでテレビや漫画を読む感覚で、
寝る。
今日見た夢は、誰かが作った物語を見せられてるような夢だった。
20そこいらの女。
どうやら人間じゃない。
30そこいらの男。
博識っぽい寡黙な人間。
2人は同居生活を営んでいる。
人間じゃない彼女を拾ったか救ったかした男が、
仕方なく同居しているような雰囲気。
彼女は、どうやらこの寡黙な男の事をとても慕っている様子。
しかし、ひょんなケンカから、彼女は男の家を出て行く。
そんな時、12月12日、夕刻の5時までに、男の持つある装置、もしくは何らかの鍵に彼女が接触しなければ、彼女はこの世界から消えてしまうことが解る。
男もそれを知り。
彼女もそれを知る。
でも素直になれない彼女は、男に会いに行くことができず、街や男の行きそうなところをうろつきながら、男の行方をこっそり捜していく。
男も男で、仕事の移動の時など、彼女のことを気にしてみるのだが、取り乱して捜したりはできずにいた。
ある行きつけの時計店で男は、彼女が自分の行方を聞き、自分のことを捜していることを知る。
そして男は安堵する。
待っていれば、彼女は自分を捜してやってくる。
そして男はわざと自分の行き場所を色々なところで明確にして、彼女に探しやすくしていく。
「10分前までいたと言ったら、すごく嘆いてましたよ」と色々な店の店主に言われるたび、男は彼女の姿を想い、そっと嬉しく思った。
彼女も彼女で、男の居そうな店を回るうちに、その店々に仲間を作っていく。
喫茶店やホテルなど、始めは人間では無い彼女に冷たくあしらうが、
人間の男を慕う彼女のひたむきで必死な思いに、ほっとけなくなっていく。
そんな中で12月12日が訪れる。
彼女は無我夢中になって男を捜す。
たまらなくなった喫茶店やホテル、飲食店の従業員たちは、
彼らも走り回って彼女に情報をくれる。
4時30分。
「作業場にいるって!」
という情報を得て、彼女は新宿の作業場に走る。
しかし、そのままじゃとても間に合わないため、
彼女はタクシーを止めようとするが、
人間じゃない彼女にタクシーは止まらないし、
止まっても他の人間たちが、どんどん彼女を差し置いて乗って行ってしまう。
困っていると、ある見知らぬ老夫婦が相乗りをさせてくれる。
タクシーの中、長年連れ添うという感覚に初めて触れた彼女は、
自分の一方的な感情に一抹の空しさというものを初めて感じる。
人間ではない自分が、男の側にいることに疑問を抱く。
一方、男は作業場で彼女が来るのを心待ちにしていた。
男の開発したこの装置に触れれば、彼女は二度と消えるようなことはない。
その上、人間にかなり近くなるように、男が寝る間を惜しんで再開発したのだ。
彼女が作業場の入り口に到着すると、男の助手の女が迎えてくれる。
助手は男のことをよく解っていて、人間だった。
彼女は「疲れたでしょう。彼も好きだから、あなたもきっと気に入る」と
甘いお菓子をくれるが、
彼女は人間では無いので、甘みを感知できない。
4時50分。
言いようのない劣等感、ここにいてはいけないという感覚が彼女を襲う。
でも、男に会いたい。男を好きな一心で彼女は作業場に飛び込む。
4時55分。
彼女と男は、やっと出会う。
男の同僚たちは、そそくさと部屋を出て行く。
心配で駆けつけた彼女の仲間たちも、一安心し、笑顔で彼女を見送る。
部屋には2人きりになる。
男は装置を彼女に見せる。
彼女は微笑む。
そして色々な思い出話をしはじめる。
男は、早く装置に触れて欲しいと思うが、
その焦りを彼女に訴えることができずにいる。
男は最後まで、彼女に装置に触れることを強要できず、
雑談の途中
「すっごい走ったのよ」
「おれはほとんどここに居たが」
「嘘よ。時計屋や大通りの喫茶店、あのすすけた感じのホテルにも何度も行ったわ」
「どうだった?」
「気に入った時計が一個も見つからなかった」
「あそこは趣味が悪いんだ」
「コーヒーを飲めるようにはなれなかった」
「あそこのは不味いんだ」
「厨房のまかないは三つ星」
「確かに」
「あとね」
彼女はゆっくり微笑んだまま、ゆらりと消えてしまう。
彼女の輪郭を縁取った粒子が空に舞い上がるように消えていく。
夕刻の西日がその粒子を覆っていく。
それをぼんやり見つめていた男は、床にゴトリと倒れる。
音を聞きつけた同僚や仲間たちが、部屋に駆けつけてくるところで、
少しずつカメラが上へ上へ引いていく。
彼女は消えていまい、
男は気絶した。
そして、私は覚醒した。
覚醒したあと、必死に彼女が復活するストーリーを思い描いてみたが、
どれも似て非なるものだった。